「ReactとTypeScriptを使っているけれど、今の月単価は妥当なのか?」。フリーランス案件を見始めると、同じ技術名なのに55万円、70万円台、90万円前後と差が大きく、判断しづらいことがあります。
結論から言うと、ReactとTypeScriptを使えるだけでは単価は決まりません。2026年8月末の公開案件を見ると、55万円の案件から90万円台まで幅があり、差を作っているのは担当工程、フロントエンド以外の守備範囲、設計・改善・リード責任などです。
平均額を1つ覚えるより、技術 × 工程 × 責任範囲で自分と案件を比べるほうが、次に狙う単価帯を判断しやすくなります。
単価差を作るのは5つの条件
1. 実装だけか、設計から任されるか
最初に比べたいのは担当工程です。同じReact案件でも、決められた画面を実装する仕事と、要件を整理してコンポーネント構成やデータ取得方式まで設計する仕事では、期待される判断が違います。
- 既存仕様に沿った実装・修正
- 詳細設計から実装・テスト
- 基本設計から画面・状態・API連携を整理
- 要件整理や仕様調整から参加
公開案件でも、75〜85万円のNext.js案件は基本設計・詳細設計・実装・テスト・運用保守までを対象にし、90万円の基幹システム刷新案件では設計・実装・テストを一貫して主導する内容になっています。
2. UI実装以外の品質改善まで持てるか
React案件では「画面を作れる」から一歩進み、性能や保守性まで扱えると役割が広がります。
- 再利用しやすいコンポーネント設計
- 状態管理・データ取得の整理
- 既存コードのリファクタリング
- 表示パフォーマンスの改善
- アクセシビリティの改善
- テストやレビューによる品質担保
実際、70〜85万円帯の公開案件には、UI/UXだけでなくパフォーマンス改善、アクセシビリティ、SEO、Core Web Vitals、リファクタリングなどを含むものがあります。単なるコーディング量ではなく、プロダクト品質へ責任を持つ範囲が広がっています。
3. Next.js・API・バックエンドまでつなげられるか
TypeScriptの強みは、フロントエンドだけに閉じない案件でも使われることです。React / Next.jsに加え、Node.jsやNest.jsを使ったAPI開発まで含む案件もあります。
90万円超の公開例では、React / TypeScriptのフロントエンドに加えて、Node.js / TypeScriptのバックエンドAPI、認証・権限、AWSまで扱う案件があります。
「フルスタックなら必ず高単価」という意味ではありません。ただ、フロントの実装だけでなく、API設計やデータフローまで理解できると、任せられる範囲が広がるのは確かです。
4. AWS・CI/CD・運用まで追えるか
本番で動くWebサービスは、Reactのコードだけで完結しません。ビルド、デプロイ、環境変数、CDN、ログ、監視までつながっています。
- GitHub ActionsなどのCI/CDを追える
- AWSやGCP上でどこにデプロイされるか説明できる
- 本番障害でフロント・API・インフラを切り分けられる
- リリース後の確認や運用改善まで担当できる
案件票でAWSやTerraformが併記されている場合、単に「クラウド経験あり」と書くより、自分がどこまで担当したかを説明できるほうが比較しやすくなります。
5. 技術判断・レビュー・調整まで担うか
単価が上がるほど必ずマネジメントが必要、というわけではありません。ただし高い単価帯の案件では、実装以外の判断が含まれるケースがあります。
- ライブラリやアーキテクチャの選定
- Pull Requestのレビュー
- PdM・デザイナーとの仕様調整
- 技術的な改善提案
- チーム内への知識共有
- 後続メンバーが進めやすい設計・ルール作り
「自分で実装できる」から「チームの実装品質を上げられる」へ責任が広がると、比較対象になる案件も変わってきます。
React案件ではTypeScriptが前提になりやすい
ReactとTypeScriptの組み合わせは、特殊な一部案件だけではありません。フリーランスHubの2026年8月集計では、「React × サービス」案件で併用される開発言語の1位がTypeScriptで9,183件、JavaScriptが6,529件となっています。
React公式ドキュメントでもTypeScript利用方法が案内されており、JSXやReactコンポーネント、Hooksへ型を付ける一般的な構成が示されています。
そのため、React案件を広く探すならTypeScriptは「あると少し有利な追加技術」というより、実務上かなり重要な組み合わせとして見たほうがよいでしょう。
ただし、TypeScriptを使っているだけで単価が上がるわけではありません。型定義、設計、レビュー、リファクタリングを通じて、変更しやすく安全なコードへどう貢献したかまで説明できることが重要です。
月60〜80万円なら何を見直す?
現在60〜80万円前後で参画している場合、単価だけを見て「低い」「高い」と決めるのは避けたいところです。まず、自分の担当範囲と同条件の案件を比較します。
| 現在地の例 | 次に確認する差分 |
|---|---|
| 60万円台・実装中心 | 詳細設計、テスト設計、レビュー、性能改善まで広げられるか |
| 70万円台・設計〜実装 | Next.js、API連携、クラウド、CI/CD、品質改善を任せられるか |
| 80万円前後・広い担当範囲 | 要件整理、技術選定、レビュー主導、PdM・デザイナーとの調整まで担えるか |
この表は「このスキルなら必ず○万円」という保証ではありません。単価アップのために、どの責任範囲を次に増やすか考えるチェックリストです。
特に注意したいのは、技術名を横へ増やすだけの学習です。React、Vue、Svelteを少しずつ触るより、現在使っているReact / TypeScriptで設計・テスト・性能・運用まで一段深く担当したほうが、職務経歴書で説明しやすい場合があります。
スキルシートは「技術名」を仕事へ変換する
案件面談で「Reactを3年使っています」と伝えても、相手には担当範囲が見えません。年数の横に、何を任されていたかを足します。
伝わりにくい例
React / TypeScriptを使用。画面開発を担当。
担当範囲が分かる例
React / TypeScriptで管理画面の機能開発を担当。既存仕様の調査、コンポーネント設計、API連携、実装、テスト、コードレビュー修正まで対応。
さらに実際に経験しているなら、「表示速度改善」「共通コンポーネント化」「CIの修正」「AWS上のログ調査」など、自分で説明できる仕事を追加します。
架空の成果や数値を足す必要はありません。技術 × 工程 × 判断が見えれば、同じ経験年数でも担当できる仕事の違いが伝わります。
自分の相場は同条件の10案件で確認する
自分の適正単価を確認するときは、検索結果の最高単価ではなく、実際に応募条件を満たしそうな案件を10件ほど並べます。
- 技術:React / TypeScriptを必須条件にする
- 工程:自分と同じ「実装中心」「基本設計以降」などへそろえる
- 役割:フロント専任、フルスタック、リード候補を分ける
- 周辺:Next.js、API、AWS、CI/CD、テストの有無を記録する
- 働き方:週日数、リモート、勤務地、稼働時間を合わせる
- 単価:月額だけでなく精算条件や責任範囲も見る
10件並べると、高い案件に繰り返し出てくる条件が見えてきます。たとえば「基本設計」「Next.js」「性能改善」「レビュー」「AWS」が何度も出るなら、それが次に伸ばす候補です。
この方法なら、「平均は何万円?」という曖昧な問いを、「自分が次の単価帯へ行くために何が足りない?」へ変えられます。
相場確認で避けたい4つの思い込み
- 最高単価を自分の相場にする:高単価案件には広い責任や特殊条件が含まれることがあります。
- React + TypeScriptなら一律で高単価:技術名より工程・役割・責任を比較します。
- 月額だけで良し悪しを決める:稼働時間、リモート、契約期間、商流、緊急対応も確認します。
- 経験年数だけで判断する:同じ5年でも実装中心と設計・リード経験ありでは任せられる範囲が違います。
月額単価は会社員の給与や手取りとも同じではありません。税金、社会保険、経費、稼働が途切れる期間などがあるため、年収換算だけで案件価値を決めないようにします。
次の単価は「任せられる範囲」で決める
React・TypeScript案件は、公開例だけでも55万円から90万円台まで幅があります。差を作るのは、技術名そのものより、どの工程を担当し、どこまで品質・運用・技術判断へ責任を持つかです。
まず今の案件について、「技術」「工程」「品質改善」「周辺領域」「判断・調整」の5項目を書き出してみてください。そのうえで同条件の案件を10件比較すると、次に伸ばすべきスキルが具体的になります。
平均単価を追いかけるより、「自分に何を任せられるか」を一段ずつ広げる。React / TypeScriptの経験を単価へつなげるなら、ここから始めるのが実践的です。